英国民投票、離脱派勝利、残留支持派の「恐怖作戦」が裏目にでたか?



 「普通の人々の勝利だ」。英国独立党(UKIP)のファラージュ党首はそう宣言した。英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票は離脱支持派の得票率が約52%に達し、残留支持派(約48%)を上回って勝利を収めた。

 離脱派が多数を占めるに至った要因の1つは移民問題を前面に押し出したことだろう。2004年のポーランド、ハンガリーなど旧東欧諸国のEU加盟以降、英国への移民流入が増加。英国は人やモノの自由な移動を保証する「シェンゲン協定」の適用除外だが、実際には多くの移民を受け入れた。

 政府統計局(ONS)が5月に公表したデータによれば、昨年の移民純増数は33万3000人となり、前年を2万人上回った。「ポーランド移民などの受け入れを通じてサービス業の労働力を確保してきた」(経済産業研究所の中島厚志理事長)面はあるが、一方で、「移民の増加は労働者階級の時給低下を招いた」(大和総研ロンドンリサーチセンターの菅野泰夫シニアエコノミスト)。昨年から深刻化する難民問題も国民の反移民感情を刺激した感がある。

 キャメロン首相ら残留派が、離脱に伴う経済的損失をひたすら強調した戦略が裏目に出た可能性も否定できない。デメリットばかりクローズアップするやり方は「プロジェクト・フィアー(恐怖作戦)」などと批判の対象にもなった。

 「残留派は欧州統合が進む中で離脱するのは得策でないとの考えを繰り返したが、問題の核心には触れていなかった」(経済産業研究所の中島氏)。たとえば、移民政策でも英国がEUの枠組みを外れれば、自国の経済情勢や労働需給などを見据えながら受け入れを増やしたり減らしたりといった機動的な対応ができるなど、むしろ裁量の余地が大きくなるかもしれない。そうした疑問に残留派がどこまで丁寧に説明したのだろうか。

 「われわれは欧州人ではなく英国人」。こうした国民の根底にある意識がEUからの独立機運の高まりにつながった、との指摘も少なくない。大和総研の菅野氏によれば、離脱あるいは残留のいずれかが決まったときの感情について聞いたアンケートで、「喜ぶ」と回答したのは離脱時で44%、残留時が28%。一方、「落胆する」との答えは残留時が44%だったのに対し、離脱時は33%だった。

 つまり、残留よりも離脱が決定したときに「喜ぶ」と答えた人が多く、離脱よりも残留が決まったときに「落胆する」と回答した人が多かったというわけだ。アンケート結果からも本音では離脱支持と考えていた人が多かった状況がうかがえる。


■ 「半数近くは離脱反対」が意味するものは

 ただ、1741万あまりの離脱支持票があったのに対して、1614万超の残留支持票があったことも忘れてはならない。中上流階級は残留を支持し、労働者階級は離脱を支持。世代別でも、EU加盟後の英国しか知らない多くの若者が残留を訴えた一方、EUの共通政策に縛られるのを嫌った高齢者は離脱の必要性を唱えた。

 「分裂の危機」にあるのは国家も同じだろう。スコットランドでは投票で残留支持が圧倒的多数となった。今後、英国からの分離独立を求める声が再び高まるのは必至とみられる。

 投票結果を受けてキャメロン首相は辞意を表明。これに対して、離脱派は「投票日を独立記念日にしよう」などと気勢を上げた。だが、足並みが乱れたままならば、外国為替市場でのポンド売り圧力が一段と強まるかもしれない。後継者の舵取りを世界中が注視している。


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